2015年5月9日土曜日

膵臓がんの最新治療 「ナノナイフ」と「重粒子線治療と抗がん剤の併用療法」


先日のワールドビジネスサテライトの「治る!最前線」というコーナーで放送されていた膵臓がんの最新治療が興味深かったので紹介します。私の母も以前にがんで闘病生活をしていたので、がんの最新治療などには敏感になってしまいます。
膵臓がんについて

膵臓は胃の裏側にあり、食べたものの消化や血糖値の調節のための成分を作っている臓器です。周りを肝臓や十二指腸など様々な臓器に囲まれており、さらに大動脈や門脈という太い血管が近くにあるため、がんが血管を巻き込み見つかった時には手術ができないことが多いという非常に治しにくいがんです。
膵臓がんの死亡者数は年間約3万人で、主な原因は喫煙、肥満や糖尿病などです。
ナノナイフ

ガンの中でも治療が難しいとされる膵臓がんの国内初の最新治療を受けることになったのは60代の男性患者。4年くらい前から左脇腹に痛みがあり医者にかかったが、筋肉痛と診断され湿布薬と痛み止めを処方されていたそうです。痛みが続いたため、去年の秋に精密検査を受けたところ、膵臓がんと診断され、直径約3.5cm とかなり進行している状態でした。

血管ががんに取り込まれています。白い部分が血管で、がんが血管を囲んでしまっています。


治療に使うのはナノナイフと呼ばれる新しい器具です。ナノナイフは先端の針の部分から電流が流れる仕組みになっていて、今回の治療ではがんの周りにナノナイフを4本差し3000ボルトの高圧電流を1/10000秒流すことを繰り返します。


電流が流れたがん細胞にはナノサイズの穴が開き細胞は死滅します。一方、繊維でできた血管組織は電流が流れただけでは傷つかないので、血管に絡みついていたがん細胞のみが死んではがれていくという治療法です。

実際の治療のシーンではナノナイフを腹膜に4本差し、その先端部分に膵臓があります。針の間を高圧電流が流れ、がん細胞全てに届くように深さを変えながら通電させていきます。およそ400回の通電で終了となりました。


治療前はがんが他の場所に広がっていましたが、治療後は境界ができているのがわかります。がんが死滅し、進行が止まったということですね。この後患者は経過を見て手術でがんの部分を切除することになります。

現在は東京医科大学病院で臨床研究として治療を行っているそうです。細胞だけを殺すことができるという意味で非常に画期的な治療法で、残存のがん細胞ゼロの完全治癒切除の率が高まると期待されています。
重粒子線治療と抗がん剤の併用療法
手術ができないがんに効果的な治療法が生まれています。それが2012年に先進医療に認定された放射線治療のひとつ、重粒子線治療と抗がん剤の併用療法です。

重粒子線はサッカー場ほどの大きな敷地にある巨大な加速器で作り出す放射線の一種で、がんに当てることによりがん細胞を死滅させることができます。

膵臓は他の臓器に囲まれているため通常の放射線治療では正常な臓器にもダメージを与えてしまい、高い線量を当てることができませんでした。重粒子線はがんの場所にピンポイントで線量が高くなるように設定できるのが特徴です。

実際の治療では体をしっかりと固定し、技師が画面上で患者の幹部のレントゲン画像と重粒子線の照射位置を細かく合わせます。照射時間は20分ほどで週4回、全部で12回照射をします。

また、欠かせないのが抗がん剤の併用です。膵臓がんは転移しやすいため全身に働きかける抗がん剤が標準治療になっています。従来の放射線治療の場合カラダへの負担が大きいため、抗がん剤の量を減らす必要がありましたが、重粒子線は放射線量も抗がん剤の量も減らさずに治療が可能です。


2年後の幹部の画像です。白く光っている部分ががんで、治療後にはがんが消えているのがわかります。

2年生存率は抗がん剤治療のみの場合は10-15%ほどでしたが、重粒子線+抗がん剤の場合43%に上がります。

先進医療で治療費は約320万円とのことです。
新しい治療法によって、治療の選択肢が増え、がんを克服する可能性が上がると良いですね。

1 件のコメント:

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